刑法
新宿拳銃事件 Xは、強盗殺人の故意でAに対して拳銃を発砲しており、結果発生の具体的危険性が生じていることから、Aに対する強盗殺人未遂罪が成立する。 ※強盗致傷罪も成立するが、法条競合により強盗殺人未遂罪が成立する。 一方、強盗殺人罪の主たる保護法…
ひったくり 確かにXは有形力の行使をしているようには思えるが、強盗罪の成立には犯行を抑圧する程度の暴行脅迫がある必要があり、本件においてXは、犯行を抑圧してはいないため、単に窃盗罪が成立するにとどまる 一方、その後引きずって抵抗できない状態に…
ロー生失格 2限の終了時刻は12:10であり、4限の開始時刻は14:50である。 何ら記述がないところから、Aは2限終了後すぐに教室を去り、Xが持ち去ったのは14限がはじまる少し前であると考えられる。 そうであるとすると、Aが判例刑法各論を置き忘れてからX…
名誉毀損罪 第1審判決の内容に基づいており、「確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるとき」にあたるから、230条の2により名誉毀損罪は成立しない。 ただし、Aの刑事裁判の結果における法的事実の認定が、Xの名誉毀損罪の成立について拘束力をもつのか…
監禁罪の成否 AはXの目的に気がついていないことから、監禁されている認識を欠いている。 したがって、現実的自由説であれば、監禁罪は成立しない。 一方、可能的自由説であれば、車の走行によって移動できる可能性が侵害されているため、監禁罪が成立する。…
交通事故で妊婦に傷害 出産前であれば、いまだ始期が到来していないため、犯罪は成立しない。 他方、帝王切開した場合は全部露出していて始期が到来している。抽象的法定符号説を転用する判例の立場であれば、過失運転致死罪が成立しうる。 嬰兒の放置 まず…
被教唆者が刺す相手を間違えた 被教唆者Yは殺人罪の客観的構成要件に該当する行為を行ったが、客観的事実と認識にズレがあるため故意の存否が問題となる。しかし、およそ「人」を殺害しようとしてBという人を殺害している以上、故意も認められ、殺人罪が成立…
妻を利用した収賄 Yが事情を知らないなどの事情があり、正犯意思がなければ、Xは収賄罪の間接正犯。Yは故意がなく不可罰(身分なきものを利用した間接正犯。)。 Yが事情を知っていて、正犯意思があれば、XとYに収賄罪の共同正犯(60条、197条、Yについて65…
拳銃の貸与 拳銃が故障していた以上、幇助犯は成立しないようにも思われる。 しかし、拳銃を貸してもらえなければ犯行に至らなかった場合など、拳銃の貸与が犯罪を促進したような場合には、殺人の幇助犯は成立しうる。 (ただし、本件についてはもともと拳銃…
酒癖の悪い人 Xは、既に何度も暴行事件を起こしており、警察からも飲酒を控えるように指導を受けていたことから、自らのその性癖について認識が有り、その性癖がある以上飲酒を抑止又は制限するなど危険の発生を未然に防止するように注意する義務を負ってい…
映倫 映倫管理委員会は、私的団体ではあるが、映画形式による表現の事由を映画業界関係者自らの手によって守るために作られた実質的な規制機関であり、真摯な活動を続けた結果、映画製作者に対して相当な影響力を持った団体となっている。 そうすると、映倫…
新過失論 制限速度遵守など法令上の注意義務を起訴としつつ具体的な状況に照らし「社会生活上必要な注意」という観点から注意義務(予見義務+結果回避義務)を認定する必要がある。 したがって、園児の飛び出しが予想されるような状況においては、単に規制…
被害者の近くに人がいた場合 Aに関して Xは殺意をもってAに拳銃を発砲し、意図したとおりAに弾丸が命中して死亡させていることから、Aに対する殺人罪が成立する Bに関して Aの近くにいたBに対して、弾丸が命中する危険性はあったものの、実際には当たってい…
わいせつ物頒布罪 チャタレー事件(最大判昭32.3.13) ・刑法175条の罪における範囲の成立については問題となる記載の存在の認識とこれを頒布販売することの認識があれば足り、かかる記載のある文書が同条所定の猥褻性を具備するかどうかの認識まで必要とし…
ジャイアンツファン(笑) ゲームの妨害をすることは、管理権者の意思に反する立ち入りであって、「阪神甲子園球場」という人が看守する「建造物」に、「侵入」していることから建造物侵入罪の構成要件に該当し、また、そのことについて真正な同意があったと…
酔っぱらいにからまれた事案 かなり微妙な事例。 軽微な侵害に対して、あえて過大な行為を認識して行っており、防衛の意思を否定するという議論を導くのはひっかけか。 ホームに転落させることまでは意図していなかった以上、酔男にからまれる中で、そこから…
36条1項の「やむを得ずにした行為」 最判昭44.12.4 「急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度 すなわち、 反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであること」 「やむを得ずにした行為」…
最判平9.6.16類似の事例 胸を強く押す行為には、急迫不正の侵害及び防衛の意思を認めることができる。 その後、地面に点灯してしばらく動かなくなっているが、その後立ち上がって攻撃を再開するそぶりを示しているため、いまだその時点では被害者における加…
正当防衛と緊急避難 正当防衛の成立要件は、行為無価値論的立場からは、 ①急迫不正の侵害 ②自己又は他人の権利 ③防衛の意思 ④必要性・相当性(やむを得ずにした行為) 緊急避難の成立要件は、行為無価値論的立場からは、 ①現在の危難 ②避難の意思 ③補充性(…
不作為犯の事例問題 Aがキッチンのガスコンロを転化したままで逃げ出したことは、Xの暴力行為(先行行為)が誘発したものである。 また、部屋にはXしかおらず、X以外に消火することができる者がいなかった以上、結果への支配性が認められ、前述の先行行為(…
実質的違法性論、結果無価値論・行為無価値論 実質的違法性論は、違法性を、実質的根拠から理解する理論。 実質的違法性を理解するにあたり、刑法の任務を法益保護と解し、法益侵害・危険の惹起が禁止の対象であるとして、結果無価値の惹起が違法性の実質を…
母親が出産直後の赤ちゃんをそのまま放置して死亡させた場合 周囲の環境にもよるが、ここでは周囲に誰もいないところに赤ちゃんを放置したことを想定する。 その場合、母親は、赤ちゃんの死という結果発生を支配できる状況にあり、また、820条の監護義務を負…
不作為犯 不作為により構成要件を実現する犯罪 ・真正不作為犯:不作為を明示的に構成要件要素として規定し、それが犯罪となる条件を法文上明定しているもの ・不真正不作為犯:不作為が明示的に構成要件要素として規定されていない犯罪であって、通常は作為…
熊うち事件 先行行為が死因を形成し、後行行為が死期を早めたという意味では、大阪南港事件と類似の事例。 ただし、大阪南港事件が先行行為も後行行為も故意によるものだった一方で、熊うち事件は先行行為が過失、後行行為が故意によるものである。 また、先…
相当因果関係説 条件関係に加えて、相当性が必要とする。 主観説・客観説・折衷説の3つがあるが、客観説と折衷説で対立 主観説:行為社が認識・予見した事情及び認識・予見しえた事情を考慮 客観説:行為当時存在したすべての事情及び行為後に生じた客観的…
スキーの初心者が上級者コースを滑った場合 実行行為は、コースを滑走しはじめた時点に求めるべき。 よって、止まらなくなってから、他の滑走者に衝突してもやむをえないと考えても、構成要件該当性を左右することはない。 コースを滑走し始めた時点で、十分…
身分犯 主体に一定の属性(身分)を要求し、主体の範囲を限定している犯罪。 ex)収賄罪 ①構成的身分犯(真正身分犯):身分がなければ犯罪が成立しない ②加減的身分犯(不真正身分犯):身分があることによって刑が加重・減軽される 自動車運転中の発作 そも…
猿払事件 法律主義(憲法31条、73条6号ただし書)の観点から、法律が行政府に具体的な罰則の制定を許す場合でも、国会が罰則の内容についてコントロールしていることが必要であり、憲法73条6号ただし書にいう「委任」は、委任する事項が特定されたものでな…
刑法の基本 応報刑論 古典学派は、人間の自由意思を認め(非決定論・自由意志論)、自由意思の発現としての客観的な行為及び結果に着目し(行為主義・客観主義)、その犯罪的意思に対し道義的な非難としての責任を問えるとする(意思責任論・道義的責任論)…