BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

任意同行と取調べ

東京高判昭和54.8.14

「実質的には逮捕行為にあたる」の意味

 強制処分にあたる

判断を導いた事情

場所:パトカー。車で50分かかる距離。駐在所は被疑者に不利な場所。

方法・態様:パトカーで、Xを警察官が挟んで乗っていた。5人の警察官。

時刻:午後11時以降。

同行後の状況:「既に逮捕しているなら遅いから留置場で寝かせてほしい。まだ逮捕していないなら帰らせてもらう」

←→

どこに行ってもよい。

自分からパトカーに

Xを同行した法的根拠

任意同行

神戸地決昭43.7.9

 行き先も告げないまま、被疑者を取り囲んで、引き続き取調べを開始。連行の態様やその前後の状況等に照らしてこれを実質的にみる

富山地決昭54.7.26

 午前8時からよく24日午前0時という長時間にわたり取調べが続けられた。しかも、7時以降は夜間。意思確認なし。外部連絡や退室の機会を与えていない

適法?

 違法ではあるが、証拠として排除されるほどの重大な違法ではない(違法収集証拠排除原則に照らして)

高輪グリーンマンション事件

取調べを妥当なものとはいい難いとした事情

 「すなわち〜」以下。連日にわたる長時間の取調べに応じざるを得ない状況に置かれていた。期間も長い。

違法なものとまでは断じがたいとした理由

 任意に応じていたことと、必要性

最決平成元.7.4

 一睡もさせずに徹夜で行われており、長時間にわたる取調べは心身に多大の疲労・苦痛を与えるもので、また、他にとりうる方ともあったことから必要性が低い。

→適法性を公認するには慎重を期さなければならない

一方で、任意であることを裏付ける特殊事情があり、また、被告人が自白を始めたのは、翌朝午前9時半過ぎころ(比較的早い)。目的も時間制限を免れることではない。

急速させてほしいという申出はなく、意識が朦朧としていたことも認められない

東京地決昭55.8.13

 高輪グリーンマンション事件と判断基準が異なる。高輪グリーンマンション事件は、任意処分の限界を超えるものとしているが、こちらでは、そもそも強制処分としているように読める。

実質的逮捕と見るべき状況の存否

 判断していない。本当は判断すべき。しかし、本件ではそちらは筋悪だった?

「刑訴法198条に基づき、任意捜査としてなされたもの」とする理由は、意思に反するものではなかったという意味?強制処分の手続きに乗っかっていないという意味?

「任意捜査の一環としての〜矯正手段によることができない」の意味

 任意捜査は、意思に反する重要な権利利益に対する実質的制約なしに行わなければならない

実質的逮捕ではない?

 東京地決昭55.8.13に比べれば、同宿ではなく、また、その配置からしても、実質的逮捕ではないとみることもできる

東京高判平成14年9月4日

 実質的逮捕と見ることができると思われる。ただ、この判決においては、任意処分の限界として判断している

木下、大橋意見

 任意性が弱い。このことから、強制処分に当たらないとしても、任意処分として違法

大阪高判昭和63.2.17

 徹夜の取調べは、特段の事情がなければ許容されないが、本件では、犯罪事態も、重大な法益侵害を友アヌ事案ではないし、徹夜の取調べを積極的に希望していたものではない。

東京高判平成14.9.4

 9泊という長期間。また、厳重に監視。少なくとも3日め以降の宿泊については自ら臨んだものではない、宿泊場所について真摯な検討を行った

それぞれの比較

 3−6は、徹夜なので、3−7との関連。3−2は徹夜ではない。3−2は、3−8と比べれば短期。

昭和51年決定との比較

同じことを言っているのではないか

本決定の相当性の判断

 事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案

 51年決定と同趣旨だとしたら、比較衡量になる。

 なお、任意に応じたとしても、同意の範囲は無限定なものではなく、保護すべき利益はいまだ存在している。また、途中から任意でなくなっていることもある

徹夜の取調べの許容性

 身体拘束中の方がまだ許されやすい