BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

2017-01-01から1年間の記事一覧

補強証拠

補強法則 自白だけでは有罪にすることができない。 自白が完全に任意になされるのであれば、補強法則はいらないようにも考えられる。しかし、戦前、自白だけで処罰できるとしていた頃には、拷問を誘発した。すなわち、自白は完全に任意にされるわけではなく…

自白の証拠能力

柔道 自白の任意性がない以上、証拠とすることができない。 自白法則の根拠には、①319条1項に規定する自白は、虚偽のおそれが大きいから排除される(虚偽排除説)、②黙秘権の侵害を防止するために排除される(人権擁護説)、③自白採取手続の適法性を担保す…

挙証責任と推定

嘱託殺人 犯人性について、合理的な疑いを超える程度の証明がなされていない以上、Xに対して有罪判決を下すことはできない 挙証責任の所在 殺意をもって、人を殺したという殺人罪の構成要件については証明されているものと考えられ、通常の殺人罪で有罪判決…

債権譲渡

債権者代位権・債権執行・債権譲渡の比較 ・Bが無資力の場合には債権者代位権を使える。もちろん債権執行もできる(転付命令は略)。この場合、あえて譲渡を受けなくても、債権者代位権でCに対して請求できるため、必ずしも応じる必要はない。なぜならば、譲…

社債、社債管理者、社債権者集会、新株予約権付社債等

236条1項2号の払込みと、238条1項3号の払込みの違い 第二百三十六条 株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。一 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種…

訴因

訴因の特定 被告人の防御権 裁判所の審判対象の画定 (1)は明示しているといえる (2)は、場所について明示されていないといえる 訴因不特定の主張時期 冒頭手続の時点 訴因不特定の主張をする場合 起訴が違法であることの異議申立て。 裁判所は、検察官に対し…

詐害行為取消権

二重譲渡と詐害行為取消権 最判昭36.7.19は、損害賠償請求権という金銭債権に転化することから、詐害行為取消しを認める。 もっとも、特定物債権のままで詐害行為取消し後に改めて履行請求できるとすると、対抗要件制度の趣旨に反することになるから、それは…

株式会社の資金調達

株主割当て・公募・第三者割当て 田中p.462 株主割当て:株主に対して募集株式の割当てを受ける権利を与えて行う 公募:不特定多数の者に募集株式を取得させる形で行う 第三者割当て:特定の第三者に募集株式を取得させる 株主割当が既存株主に資すること 神…

金銭債権からの債権回収

代位訴訟と取立訴訟の得失 前回の参照 債権者代位権の要件 ・被保全債権が金銭債権(423条1項本文) ・被保全債権の履行期の到来(423条2項) ・債務者が無資力であること(423条1項本文) ・債務者が権利を行使していないこと ・行使される権利が一身専…

債権回収法総論

和解の提案 飲むべきではない。Yに資力がないのであれば別だが、3万円程度の資力は当然にあるものと考えられる。そういうとき、Yがどのような性格であろうと、最終的に強制執行に及ぶことができるのであるから、和解に応じずとも3万円の回収をすることは可…

株式会社の計算

長銀事件 ノンバンクとは、貸金業者のこと。 新経理基準を厚生なる会計慣行と認めたわけではない。 決算経理基準は、大枠の指針を示す定性的なもので、具体的適用は明確となっていない。 新経理基準と旧経理基準は、ほぼ並列で存在していたもの 最判平16.7.1…

公訴の提起

検察官の訴追裁量権 日本の刑訴法は、「第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」となっており、たとえ事実に関する十分な根拠が存在するとしても…

弁済・受領遅滞

解除の要件と弁済の提供 まだ買いたい場合 相手が解除の要件を満たさないことを主張する。 具体的には、本件は541条の催告による解除であると考えるが、その要件は、①履行期の徒過、②債務の不履行が違法であること、③催告、④相当期間の経過であるが、このう…

株式の流通と株主名簿、株式振替制度

株券発行前の株式の譲渡の効力(最判昭47.11.8) 取締役の解任についての株主総会の定足数 取締役は原則として株主総会の普通決議(341条)により解任できる(339条1項)。ただし、累積投票で選任された場合には、特別決議(342条6項、309条2項7号) 定…

第三者の債権侵害

賃貸借に基づく妨害排除と代位権 (1)不法占拠者に対しては、賃借権に基づく妨害排除請求をすることができる(賃借権の対抗要件を問わず)。 他方、YもAから土地を借り受けている場合は、賃借権にかかる登記(605条)がされている場合に限り、妨害排除請求…

接見交通

最判平11.3.24 憲法34条前段 規定の文言からすると、単に被疑者が弁護人を専任することを官憲が妨害してはならないということを規定しているようにも思える 最判平11.3.24は、それを超えて、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を…

逮捕に伴う無令状の捜索差押え、強制採尿

最判昭36.6.7 逮捕に伴う捜索差押えが無令状で許される理由を、①人権の保障上各別の弊害がないこと、及び、②操作上の便益にもかなうことがあげられる X宅に証拠物が存在する蓋然性 麻薬という禁制品で、自宅に隠している可能性が高く、X宅に証拠物が存在する…

債務不履行の効果

損害賠償の範囲(特別損害) (1)乙契約に損害賠償額の予定条項を挿入しているため、乙契約の債務不履行となっても100万円の損害で済む。しかし、900万円未満であれば買った方が有利であるため、880万円で買う。 380万円について、損害賠償請求をする (2…

令状による捜索差押え

住人の承諾ありの現場検証 許される。強制処分ではないから。 住人の承諾なしに行うためには、裁判官の発する検証許可状を得て行わなければならない(憲法35条、刑訴218条) 捜索差押え (1)Bの承諾が得られる場合、任意捜査として令状なしで行うこともで…

債務不履行の要件2

遅滞に基づく解除なき損害賠償 催告と解除を行っていた場合 解除を行っている以上、AからBへの請求は認められない。 解除を行っていることから、415条2項3号による填補賠償として、BからAへの請求は認められる 催告のみを行っていた場合 解除をしていない…

債務不履行の要件

不履行態様 12月1日の午前3時にYの配電設備の保安上の懈怠から本件倉庫が焼失した →契約締結時間が分からないが、いずれにしても不能。旧法の旧解釈では、契約締結前に焼失しているならば、契約自体が成立しない 1月1日に、YはXに「絶対におまえにあの倉…

監査役制度の概要、監査役の資格・選任・終任

監査の範囲の制限 非公開会社は、監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めて、制限することはできる(389条)。もっとも、そうした監査役しかいない場合には、2条9号の「監査役設置会社」には当たらないことになる 監査役設置会社 2条9号…

取締役の義務と責任

最判平22.7.15 意思決定過程 ・全般的な経営方針等を協議する期間である経営会議において検討 ・弁護士の意見も聴取 →何ら不合理な点は見当たらない 判断内容 ・任意の合意に基いて株式を買い取ることは、円滑に株式取得を進める方法として合理性がある ・設…

社会観念審査

補助金交付要綱と法律による行政の原理 侵害留保説からすると問題ない。 重要事項留保説からすると、問題がありうる。国民から徴収した財産の使途を定めるという重要事項は法律で定めるべきであるという考え方もありうるからである。 もっとも、補助金の財源…

逮捕・勾留

逮捕状発付の要件 ①逮捕の理由「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(199条1項・2項) ②逮捕の必要(199条2項ただし書) 本件で、逮捕の理由は認められるかもしれないが、逮捕の必要が認められるかは微妙。Vは所在不明となっているものの…

法律による行政の原理

法律による行政の原理と憲法84条の関係 旭川市国民健康保険料事件においては、公法関係において名分なく妥当する法律による行政の原理(国民に対して義務を瑕疵又は権利を制限するには法律の根拠を要するという法原則)を租税について厳格化した形で明文化し…

任意同行と取調べ

被疑者ではない者からの事情聴取 出頭を求め、取り調べる(223条1項)。 拒んだ場合、要件を満たせば第1回公判期日前に、証人尋問を請求することもできる(227条1項) 被疑者からの事情聴取 出頭を求め、取り調べる(198条1項)。 被疑者が出頭を求めら…

債権の効力

履行請求件への拘束 瑕疵担保責任(570条、566条)による解除をしておくべきだった。 解除をしていない以上、現在は支払を拒絶することはできない。 現在、解除をすることができるのかは微妙(既に瑕疵がなくなってしまっているため)。 給付保持力・請求力…

訴状の試作

訴状 ○○裁判所 原告 X 被告 Y 売買代金請求事件 第1 請求の趣旨 1 被告は、原告に対し、450万円を支払え 2 訴訟費用は被告の負担とする との判決及び仮執行の宣言を求める 第2 請求の原因 1 原告は、平成29年7月2日、被告に対し、高級外国自動車を450…

民事訴訟の概観

訴額よりも大きい金額を裁判所が認定することはできるか 民事訴訟は、実体法である民法を実現する手続であることから、私的自治の原則が妥当する。そして、それは訴訟物レベルにおいては、処分権主義として作用する。 したがって、裁判所は、通常の民事訴訟…