BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

刑法導入部の復習

猿払事件

 法律主義(憲法31条、73条6号ただし書)の観点から、法律が行政府に具体的な罰則の制定を許す場合でも、国会が罰則の内容についてコントロールしていることが必要であり、憲法73条6号ただし書にいう「委任」は、委任する事項が特定されたものでなくてはならず、一般的包括的な委任(白紙委任)は許されない。

 罪刑法定主義の根拠条文でもある憲法73条6号ただし書が罰則の政令への委任を認めている前提の下、本件における被告人の処罰根拠である人事院規則は、国家公務員法102条1項から委任されているが、その委任の仕方が具体性を欠くようにも考えられることから問題となった。

→(判決内における正当化部分)

「政治的行為の定めを人事院規則に委任する国公法102条1項が、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するものであることは、同条項の合理的な解釈により理解しうるところである。……政治的行為の定めを一様に委任するものであるからといって、そのことの故に、憲法の許容する委任の限度を超えることになるものではない」

類推解釈と拡張解釈

 類推解釈は、裁判所による(事後的)立法であり、法律主義(及び事後法の禁止)に違反して、罪刑法定主義に反し許されない。

 刑法134条の秘密漏示罪は、その主体を「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらにあった者」に限定している。しいて言えば業務の性質が似ている「医師」と「助産師」を別に規定していることからも、これはここに具体的に掲げた立場にあるもののみを処罰対象として限定する趣旨であり、また、拡張解釈によっても看護師をこれらの限定列挙の中に読み込むことはできないから、刑法134条の秘密漏示罪を看護師に適用することはできない。

 一方で、財物を物理的に破壊しなくても、その効用を失わせる行為を器物損壊罪に該当させることは、刑法261条の規定中「損壊」の意味を「効用を失わせること」と解することによって可能となる。こちらは「損壊」という言葉の範囲内で解釈していることから、拡張解釈であり、

青少年保護育成条例

明確性の問題

 「淫行」の意味が不明確であることが、罪刑法定主義(31条、73条6号ただし書、39条前段前半)に違反するのではないか。罪刑法定主義の立脚する自由主義に反するから。

条例による処罰の問題

 民主主義に基づく罪刑法定主義の観点から、条例は、地方議会が議決しているため、刑罰を定めるのに大きな問題はないが、法律に反する条例は許されない。福岡県青少年保護育成条例が、児童福祉法34条1項6号に反するので無効ではないかということが問題となる

殺人罪・過失致死罪・自動車運転致死罪

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(過失致死)
第二百十条  過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

自動車運転処罰法

(過失運転致死傷)
第五条  自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

※無過失なら処罰しない(構成要件的故意又は構成要件的過失がなければ、構成要件に該当しないため)

※構成要件について、違法有責行為類型説ではなく、違法行為類型説をとると、殺人も過失致死も同じ構成要件となる

正当防衛

殺人の構成要件該当→正当防衛という違法性阻却事由があることにより違法性阻却される→不可罰

心神喪失

殺人の構成要件該当→違法性阻却事由がない→心神喪失であり、責任がない→不可罰

 

参考

構成要件を違法有責行為類型ととらえ、構成要件に該当したら、違法性阻却事由及び責任阻却事由がない限り、犯罪成立するという立場(いわゆる違法有責推定説)。