BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

不作為犯、違法性の復習

不作為犯の事例問題

 Aがキッチンのガスコンロを転化したままで逃げ出したことは、Xの暴力行為(先行行為)が誘発したものである。

 また、部屋にはXしかおらず、X以外に消火することができる者がいなかった以上、結果への支配性が認められ、前述の先行行為(及び部屋の所有者という地位)とあわせて作為義務が肯定される。

 さらに、水道水をかければ容易に消火できることから作為の可能性もあった。

 これらのことは、不作為の現住建造物等放火罪の実行行為に当たる。

 本件は、当該アパートが木造建築であったこともあいまって、Xのほか3世帯の住民が入居している本件アパートが焼損したという結果を引き起こしていることから、因果関係についても念のため検討する。

 因果関係は、実行行為が結果発生の具体的危険性のある行為である以上、その危険性が具体的結果として発現したか否か、すなわち、実行行為の危険性が現実化したか否かによって判断すべきである。

 そして、危険の現実化の判断においては、行為当時に存在した全ての事情を前提にして、実行行為の危険性を判断すべきである。

 したがって、本件アパートが木造建築であったことも前提に、実行行為の危険性を判断する。

 すると、本件における不作為の実行行為は、Xのほか3世帯の住民が入居している木造建築のアパートを焼損させる危険を有しており、その危険が現実化している以上、実行行為と結果との間に因果関係を認めることができる。

 さらに、Xは実行行為の際、日が炎症して自分が称ししても構わないと思い、そのまま今に座り込んでいたことから、本件実行行為の故意があったといえる。

 以上より、違法性阻却事由がなく、責任阻却事由もない以上、本件には、現住建造物等放火罪(108条)が成立する

 ※行為時にはX本人の同意があったにせよ、Xの他に3世帯の住民が入居していた以上、非現住建造物等放火罪(109条)ではなく現住建造物等放火罪(108条)となる

超法規的違法性阻却の問題

 罪刑法定主義は、民主主義及び自由主義に立脚する概念であるところ、実質的違法性論から超法規的違法性阻却を認めたとしても、自由主義に反するところはなく、罪刑法定主義に反しない

結果無価値論を前提とした外務省機密漏洩事件

 結果無価値論においては、①法益性の欠如、②優越的利益の保護の観点から違法性阻却が論じられる以上、本件においては、侵害される法益(国家機密)と、保護される法益(取材活動の自由)とのの比較衡量が行われることになる。

 この点、取材の自由は憲法21条の精神に照らし、充分尊重に値する権利である一方、国家機密の秘匿は、国家の主権維持を目的として保護されるべきものである。

 両者を比較してどちらが優越するかを論じるのは難しいが、精神的自由たる表現の自由(憲法21条)は、全国家的・全憲法的な自然権に由来するものであり、一方、国家は自然権と密接不可分に結びつく制憲権に由来した国民主権から正当性を付与されている以上、前者の精神に照らし十分尊重に値する取材活動の方が、法益が大きいように思われる。

 したがって、外務省機密漏洩事件において違法性阻却はなされるべきである。