BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

窃盗罪・強盗罪の復習

ロー生失格

 2限の終了時刻は12:10であり、4限の開始時刻は14:50である。

 何ら記述がないところから、Aは2限終了後すぐに教室を去り、Xが持ち去ったのは14限がはじまる少し前であると考えられる。

 そうであるとすると、Aが判例刑法各論を置き忘れてからXが持ち去るまでの間、およそ2時間経過していると考えられる。

 生徒であれば自由な立ち入りが想定される教室に、およそ2時間放置していたとなれば、当該判例刑法に対するAの事実的支配すなわち占有は失われていると考えられる。

 他方で、教室には前述の通り生徒(及びその他大学関係者)のみが立ち入ることが想定されており、張り紙等によってもそれが担保されているものである以上、不特定多数の者が入ることができる場所ではないから、当該判例刑法の占有は管理件者である東京大学総長(あるいは担当職員)に占有が移転していたといえる。

 そうであるとすれば、占有者の意思に反し、自己に占有を移転させたということができ、窃盗罪(235条)が成立する。(※不法領得の意思はある前提)

盗んだ原付で走り出す

 Aは、普段、鮮魚店の前を、原付の駐車スペースとして実質的に利用していた。

 このことから、事実上の保管場所に原付という財物を置いていることから、いまだ当該原付にはAの占有が及んでいることが考えられる(Aが鮮魚店を離れたのは午後7時であり、持ち去られたのは午後11時であったことから、4時間しか経過しておらず、占有を否定すべき特段の事情も存在しない)。

 なお、Aが普段事実上の保管場所としていたのは、営業時間内のみであり、本件においては鮮魚店は閉店しシャッターが閉められ無人であった以上、事実上の保管場所としての機能を失っているとの反論も考えられるが、店との近接性と、4時間という時間的近接性もあわせ考えると、単にシャッターが閉まっていただけで、事実上の保管場所としての機能を失っているということはできない。

死者の財布を持ち去る

 まず、XはAによる殺害現場を目撃していたが、何ら因果性を有さず、共犯(教義の共犯又は共同正犯)は成立しない。

 そして、Bが死亡した直後ではあるが、死者の占有は一律的に否定すべきであり、Xが財布を持ち去った時点において、当該財布にBの占有が及んでいない。また、他の者の占有も及んでいない。

 したがって、占有離脱物横領罪(254条)が成立する

 ※ところで、死者の所有権ってどうなるの?相続人がいたら相続されるのだろうけれど、相続人がいなかったら…

ロースクールで勉強してると頭おかしくなるよね…

 本件刑法の教科書は、Xの所有物であるが、占有はAにある。

 したがって、Xは脅迫によりAを畏怖させ、それにより当該教科書の占有を移転させていることから、強盗罪(236条1項)が成立する。

証拠隠滅目的

 Xは、Aを殺害した後、Aの財布やハンドバッグを持ち去っている。このことから、客観的には、Xは、Aを殺すことによって、Aの財物の占有を移転していることから強盗殺人罪が成立するようにも思える。しかし、XがAを殺害した時点では単に怨恨によるものであり財物の強取を意図しておらず、また、Xが持ち去ったのは証拠隠滅のためであって、不法領得の意思に欠けるから、強盗殺人罪は成立しない。

 したがって、前段については殺人罪が成立するにとどまる。

 一方、後段については、翻意して財布を領得した時点で、Xに不法領得の意思が発現し、その時点において、他人の者を横領したといえるから、占有離脱物横領罪が成立するといえる(前段の行為において後段の行為は評価されていないため、不可罰的事後行為とはならない)。