BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

窃盗罪・強盗罪の復習

ひったくり

 確かにXは有形力の行使をしているようには思えるが、強盗罪の成立には犯行を抑圧する程度の暴行脅迫がある必要があり、本件においてXは、犯行を抑圧してはいないため、単に窃盗罪が成立するにとどまる

 一方、その後引きずって抵抗できない状態にした場合は、強盗罪が成立し、結果的加重犯としての強盗致傷罪が成立する。

間の悪い泥棒

 Xは、まず住居侵入罪が成立する。

 そして、タンスを開けて金目の物を探している時点で、窃盗の結果発生の具体的危険性が生じていることから、窃盗未遂罪となる。

 

 この後、Aを脅迫し、縛り上げているが、これについては逮捕を免れる目的ではなく、また財物をいまだ窃取していない以上取り戻される目的とも言えず、事後強盗とはならない。

 新たに、暴行・脅迫によりAを犯行不可能な状態にし、財物を窃取していることから、強盗罪が成立する。

 窃盗未遂罪と強盗罪の目的物が同一であることから、窃盗未遂罪は強盗罪の評価に含まれているとして吸収され、住居侵入罪と強盗罪の牽連犯となる。

財物をとらなかった場合

 この場合は、上述のとおり、窃盗未遂罪が成立し、事後強盗罪とはならないことから、窃盗未遂罪と暴行罪が成立し、両者は併合罪となる。

覚せい剤取引

Xは、Aから覚せい剤をだまし取った時点で、詐欺既遂罪が成立する。そして、覚醒剤の返還あるいは代金の支払を免れるために拳銃を発射したことにより、債務を免れているから、2項強盗罪が成立し、加重犯である強盗殺人罪が成立する。

 2項強盗と詐欺罪の目的物が実質的に同一であることから、詐欺罪は強盗殺人罪の評価に含まれており、強盗殺人罪のみが成立する。

 なお、本件においてはいまだ覚せい剤の占有は確保されていないことから、裁決昭61.11.18の射程は及ばない。

盗んだ後、友人に頼む

Xの罪責

 XがAから財物を盗んだ時点で、窃盗罪が成立する。

 そして、取り返そうとしたAに対して暴行を加えたことで、事後強盗となり、強盗として論ずることになる。

 その上で、傷害を負わせていることから、Xには強盗致傷罪が成立する。

 窃盗罪は強盗致傷罪の評価に含まれていることから、強盗致傷罪のみが成立する。

Yの罪責 

 Yは、Xから事情の説明を受けた上で、Xの逃走を助ける目的で、Xと共同してAに暴行を加えている。

 共犯の処罰根拠は、共同して結果を惹起するところにあるところ、YはXと共謀した上で暴行の実行行為を分担しているところから因果性も正犯性もあり、共同正犯として論ずべきである。

 事後強盗罪は、窃盗の構成的身分犯であるところ、窃盗の身分のないYが、窃盗の身分のあるXに加功していることから、65条1項により強盗罪の共同正犯となり、傷害を負わせていることから強盗致傷罪の共同正犯が成立する。