BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

賃貸借2

賃借人が窓ガラスの修繕をしたい場合

賃借人に修繕義務を課す特約がある場合

自分の費用で修繕する

賃借人に修繕義務を課す特約がない場合

①賃貸人に対して606条の修繕義務を求める

②まず自分の費用で修繕した後、608条1項に基づいて賃貸人に対して必要費償還請求をする

特殊な強化ガラスを容れた修繕を行った場合

賃借人に修繕義務を課す特約がある場合

当然、費用償還請求はできない

賃借人に修繕義務を課す特約がない場合

 特殊な強化ガラスも、使用収益に適した状態にするために必要なものだと主張することもできなくはないが、想定しているのが台風や地震といった比較的頻度の小さい自然災害であるため、通常、必要費としては認められない(台風被害の頻発する沖縄などであれば別)。

 しかし、有益費として、608条2項に基づき賃貸借の終了の時に、価格の増加が現存する場合には、支払った費用又は価格の増加分について請求することができる(どちらを選択するかは賃貸人に選択権あり)

 ただし、有益費償還請求は、目的物を返還した時から1年以内(621条、600条)

賃料不払い

 借地借家法3条により、土地賃貸借契約の存続期間は30年。

 解約権を留保していない限り、賃貸人の解約申入れは、債務不履行(541条)に基づくもの。

 本件において、6日間という軽微な債務不履行であるため、いまだ信頼関係を破壊するに至らず、契約の解除は認められないと考えられるため、Cはそれを抗弁とし、明渡しを拒むことができる

敷金返して

敷金が、何を担保するものと合意して差し入れたかによって、考え方が代わるが、とりあえず、原状回復義務(616条、598条)の履行に必要な費用までも担保するという合意があったという前提で考える。

その場合、通常損耗について賃借人は原状回復義務を負い、その分についての敷金の返還を求めることはできない。

ただし、実際に原状回復費用として18万円がかかったと賃貸人が主張するのであれば、その立証責任は賃貸人が負う。

賃貸人が立証できないのであれば、18万円全額の返還請求が可能。

敷引特約があった場合

 敷引特約については、原則有効である。

 しかし、敷引額があまりにも高額な場合には消費者契約法10条により無効となりうる(最判平23.3.24)

 本件については、賃料月額や権利金の有無等が不明確であるため何ともいい難いが、20万円の敷金のうち18万円というのは、高額にすぎるとされる可能性もある

売買は賃貸借を破る?

 土地の賃貸借であり、土地が売却されたのであれば、土地の譲受人からの建物収去土地明渡請求を拒むことができないのが原則。

 しかし、①賃貸借について登記していた場合(605条)、②建物の登記を備えていた場合(借地借家法10条1項)には、賃借権を対抗でき、拒むことができる。

転貸人は追い出される?

 賃貸借契約が解除された場合、それが債務不履行等による法定解除であれば、賃貸人が賃借人に建物の引渡しを請求した際に、賃借人と転借人との間の転貸借契約が履行不能となり解除されることになるため、転借人は明け渡さなければならない。

 しかし、賃貸借契約の解除が合意解除である場合、契約の相対効から、当該解除を転借人に対抗することはできず、転借人は明け渡さなくてよい。

 

関連条文

(賃貸物の修繕等)
第六百六条  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条  賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2  賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条  占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2  占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百二十一条  第六百条の規定は、賃貸借について準用する。

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百条  契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。

 

(使用貸借の規定の準用)
第六百十六条  第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。

(借主による収去)
第五百九十八条  借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

 

(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条  不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。

 

借地借家法

(借地権の存続期間)
第三条  借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

(借地権の対抗力等)
第十条  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2  前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前二項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。
4  民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。

 

消費者契約法

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

関連判例

最判平23.3.24

 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り・・・消費者契約法10条により無効となる